好きだけどさよなら。
 
 都内にある、7階建てビルの3階が私の所属する「mjn芸能プロダクション」の事務所になっている。

 「おう、機嫌は直りましたか?お嬢さん。」

 いつもなら、仮眠室で眠っている社長とスタッフ一同が私を迎えた。
 今回はめずらしく焦っている様子が見てとれた。

 「用件は一つです。早く手続きを進めてください。」

 「まぁ、そう焦るな。歌手になるの、そんなに嫌か?」

 「あっ今度の写真集か?セミヌードが嫌なら水着でもいいぞ?」

 
 

 「そんなこと言ってるんじゃありません。」

 「・・・あのなあ日向、家出少女のお前をここまで育ててやった俺に恩返しってモンがいるじゃねぇかよ。」

 「恩返しなら、もう十分したつもりです。まだ足りないというなら、今まで頂いたギャラは全部お返しします。」

 「冷静に考えろ。もう、お前は普通の人間として世の中に出るのは無理だ。この世界意外で、お前に生きていく道はねぇよ。」

 ___普通の人間として・・・
< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop