響け、空に―
「孝、恥ずかしい。」
私は孝にクレープを渡した。
「なんでだよ、別にいいだろ。」
孝はきょとんとしている。
本当にそう思っているらしい………
孝はいただきます、とクレープにかじりついた。
「うまっ‼俺これが人生初クレープだ‼」
「………また食べにこようね。」
私の願いを込めた提案だった。
孝は笑みを浮かべて、無言で頷いた。
急に、孝はクレープを食べる手を止めた。
一点を見つめている。
「………?」
不思議に思い、その方向を見ると、そこには幸せそうに笑う小さな子供とお母さんがいた。
「孝、子供好きだっけ?」
「好きだよ。」
そう言った孝の顔には、悲しげな笑みが浮かんでいた。