響け、空に―

『伸へ

お前に手紙を書くなんて初めてだから少し緊張する。
この手紙を書いたのは、笑美子についてだ。

実は俺、お前が笑美子に告白してるのを聞いてたんだ(教室の前に立ったら聞こえたんだからな。盗み聞きじゃないぞ)。

お前には感謝してるんだ。

お前のおかげで俺の中に焦りが生じて、告白することができたんだ。「残りわずか」を笑美子と一緒に過ごさせてくれた。


でも、俺は死ぬ。
そこで気がかりなのが笑美子のことだ。笑美子のことだ。

あいつは、多分俺が死んでから恋をしようとしない。
恋をしたら俺への裏切りだと思ってる。

でもあいつは…伸の事を好きになると思う。もしあいつが、伸の名前を大きな声で言ったら確定だ。

そうなったら笑美子のこと、よろしくな。もう充分、あいつは俺のものでいてくれた。次はお前の番でもいい、そう思える。


……二人のものか思ってったら呪い殺す‼』


きっと何度も書き直したんだろう。消した跡がところどころにあった。
高木より先に車に向かう。

「考…お前と高木はお互いに想いあってるんだな。そんなお前たちの間に入り込めるはずがない。高木が俺を好きになるなんて絶対に無いんだ。

…今回は考の勘もはずれだな。

……なんで、なんでこんな思いをもう一度味わんなきゃいけないんだ!?俺はもうお前に負けてるんだ‼お前の勝ちってことは痛いほどわかってる‼馬鹿考‼」

空を見ながら叫ぶ。後半はほとんど逆ギレだ。

…考のことを馬鹿とか言っておきながら、一番馬鹿なのは今でも高木を諦められない自分だと分かっていた。



「考…勝ち逃げなんてずるいじゃないかよ…」


そんな時に、聞こえた


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