響け、空に―
十年後…

「考…今年もちゃんと来たぞ」

考の墓に花を供えながらつぶやく。
あれから十年。俺と笑美子は結婚した。

笑美子は忙しそうで、毎日走りまわっている。


俺は考の墓前で手を合わせた。

《もう俺は三十歳になった。立派なおっさんだ。…考、俺な、最近ひそかに考えてることがあるんだ。

…それはな、俺が死んだらお前の隣に墓を建てようと思ってるんだ。そうしたらお前とずっと話していられるだろ?そうなったら楽しいだろうなぁ。

あ、お前はこんな俺の話じゃなくて笑美子の話を聞きたいか。
笑美子はな、また映画のオファーがきたらしい。それにCMもドラマも…。正直、俺なんかより稼いでる。あ、ひがんでないぞ!?》

そんなことを報告していると声が聞こえた。

「あー伸ったら一人で勝手に拝んでる‼」


「ほんとだ。おとうさんったらだめでしょ‼」

笑美子と、笑美子に抱えられている愛しい者が言う。


「ほら、笑美子も拝めよ。凛のこと預かってるから」


「あ、本当?ありがとう」

そう言って、笑美子は俺に凛を渡した。

凛は俺と笑美子の娘で、今年六歳になる。
考らしく、後悔しないように凛と生きてほしいから『凛』


「ねえねえおとうさん」


「ん?どうした?」


「このおはかのひとはだれなの?」

凛が首をかしげる。


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