響け、空に―
「ばぁか。そんなんじゃねえよ。

見舞いに来てくれてたからそのお礼を言ってたの!!」

孝はそう言うと、私からスッ…と離れて行く。


その時とっさに私は右手を伸ばした。

《……え…何この右手…

孝を引き止めて…どうするつもりなの…?》

すぐに手を引っ込めて周りを見渡す。


《誰にも見られてないよね…?》


皆は孝の周りに集まっていたので、私の方は見ていないらしかった。


孝は皆に質問攻めにされていて、苦笑いを浮かべている。


その光景が、動物園のようで、私はつい声を出して笑った。


「ん!!また笑った〜!!」


「しかも声有りで!!かっわいい〜」

女の子達が集まってきて、私の机は一瞬にして囲まれる。


「へぇ…笑えたじゃん」

孝がそう呟くのが聞こえた。

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