最果ての月に吠える
次の日、閉園間近になっても彼女は現れなかった。





僕はライオン舎に向かう度に彼女がいないか探していたけれど、





影すら見付けられずライオンがいつもより大人しい理由を聞けずにいた。





全ての仕事を終えてもう一人のライオン担当の飼育員と事務室に戻ると他のスタッフが慌てていた。





園長は真剣な眼差しを虚空へ泳がせている。





「何かあったんですか?」





園長が僕らに気付いて重い足取りでソファから立ち上がった。





「―――水野さんが亡くなったんだ。自殺だそうだ」





彼は、僕だった。





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