最果ての月に吠える
センターのスタッフとすれ違ったが私達を呼び止めはしなかった。





彼の部屋のドアは開いていた。





流れてくる夏の風の中に混じる彼女の匂いがその所在を知らせていた。





「トモエさん」





窓をゆっくりと閉めて振り向く。





そこにいつも湛えている微笑みはなかった。





あるのは汗ばんだ私の肌すら貫く光を放つ瞳。





決意と拒絶の入り交じった硬い表情。





「連れてくると思った。安静にさせていないとダメじゃない」





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