最果ての月に吠える
彼女の瞳は壁に反射する夏日を受けて潤んでいた。





拒絶の言葉を漏らした唇を噛んでる。






そんなトモエさんを見つめる大江先輩の表情は見えない。





「大江君。もうすぐアナタの知らない人と結婚するの。だから、そんなことは言わないで」





白衣の袖に隠れた手をぎゅっと握っている。





「トモエ。オレの傍にいてくれないか?」





「お願いだから、もう何も言わないで………」





ざわめきの中でも聞こえそうな音で大きな涙が彼女の瞳から一粒こぼれた。





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