最果ての月に吠える
「これを持っていって」
センターのエントランス前に設けられた灰皿があるだけの喫煙所で、顔を洗ってきたトモエさんが細長いケースを手渡した。
「トランキライザーですか?」
彼女は頷き、取り出したタバコに火を点けた。
「違反だけど、今回は特別。骨には異状ないと思うけど大学病院に戻ったら念のため検査してもらって」
アイメイクを落とした赤い目を強く擦り、笑った。
「おかしいでしょ? 37歳の女があんなに泣くなんて。………だからアナタも笑って」
そしてもう一度、自分自身を嘲笑った。
「おかしくなんかないですよ。少しも。トモエさんの覚悟はわかりましたから」
深く深く吸い宙へゆらゆらと白い魂に似た煙を吐く。
「ありがとう。彼をよろしくね。ワタシはもう傍にいてあげられないから。ちゃんと病院に帰るのよ」
センターのエントランス前に設けられた灰皿があるだけの喫煙所で、顔を洗ってきたトモエさんが細長いケースを手渡した。
「トランキライザーですか?」
彼女は頷き、取り出したタバコに火を点けた。
「違反だけど、今回は特別。骨には異状ないと思うけど大学病院に戻ったら念のため検査してもらって」
アイメイクを落とした赤い目を強く擦り、笑った。
「おかしいでしょ? 37歳の女があんなに泣くなんて。………だからアナタも笑って」
そしてもう一度、自分自身を嘲笑った。
「おかしくなんかないですよ。少しも。トモエさんの覚悟はわかりましたから」
深く深く吸い宙へゆらゆらと白い魂に似た煙を吐く。
「ありがとう。彼をよろしくね。ワタシはもう傍にいてあげられないから。ちゃんと病院に帰るのよ」