最果ての月に吠える
エアコンとエンジンのセッションに満ちた無音の車内で私は彼女の言葉を思い出していた。





ダッシュボードに置いたままの注射器とアンプルの入ったケースがカタカタと自己主張していた。





彼の眠りを妨げないように買ったばかりのゴールドのバッグにしまう。





信号が、赤に変わった。





大学病院まであと少し。





到着すれば彼は再び収監され永遠とも言える悲しみに狂うのだろう。





そんな彼を、私は救えるだろうか。





出口のない暗闇に追い込まれた彼に光が射すのだろうか。





「………リューネ」





声に視線を向ける。





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