最果ての月に吠える

第9話 扉の影は桜の香りがする

第9話 扉の影は桜の香りがする





夢を見た。





目の前に立ちはだかる扉を開けると天へ大きく手を広げた桜が生きていた。





太陽を掴もうと伸ばす枝は血管、咲いた花びらは淡い紅色の肉片をしている。





その大木は不規則に呼吸を繰り返し甘美(カンビ)な香りとメロディを響かせている。





視界に映し出されている光景を歪(イビツ)な羽根の醜(ミニク)い鳥が全て覆ってしまう。





オレはただ傍観しながら吐き気を堪(コラ)えていた。





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