最果ての月に吠える
そこには私の意思などなく、本能のみが無意識の収縮を繰り返していた。





その呻(ウメ)きを煽(アオ)るクラシックのメロディが響く。





祖父が大好きだったドビッシー。





お気に入りのmoussyの黒いコートを着てくればよかったと少し後悔しながら、ファーバッグから買ったばかりのケータイを取り出した。





この曲のタイトルは、そう―――





「ツキノヒカリ」





雑音の向こう側に聞こえるはずの低く琴線をくすぐるアナタの声。





「わかりました。じゃあ、今夜」





けれど、時間とホテルの名前を短く伝えたのは別の声だった。





淡く儚げな期待が白いオフショルのニットワンピースへと雪のように舞い落ちた。





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