最果ての月に吠える
そんなふうに言われたら何も言えなくなってしまう。





「私のほうがタカムラさんにはお世話になってばかりで、感謝してるんです。タカムラさんに出逢えなかったらきっと私は今の私ではなかったと思います。初めてお会いした頃からずっと、そう思ってるんです」





シブヤで不思議な引力を放つ女性に彼を紹介してもらったのが17歳の時。





それから二年、最初は契約だけの割り切った関係だったのに、私の心の中では彼の存在が次第に大きくなっていた。





他の誰かに抱かれている時も、彼を思い出していた。





「私、タカムラさんが好きなんです。アナタと一緒にいられた時間だけが私の幸せだったんです。契約とか全部なしでも、私はタカムラさんが好きです」





短い沈黙を置いて彼はため息を吐くように話し始めた。





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