最果ての月に吠える
大きな観覧車の見えるホテルの最上階。





慣れた仕草で私はその部屋の前に立った。





ベルを鳴らさずノックを三回。





ロックが外され内側にゆっくりと開いたドアから、闇を孕(ハラ)んだ室内を照らす観覧車が見えた。





毒々しいイルミネーションを浴びながら私はEGOISTの黒いロングコートを脱ぎ落とす。





お揃いで買ったルーズブーツには不釣り合いのベージュのカーディガンとグレーのチェックのスカート。





全てはブーツを脱いだ私に食い入る視線を向ける彼のオーダーだ。





そんな彼を置き去りにして窓辺に立つと、ネオンカラーに負けまいと白い雪がその光に身を染め踊っている。





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