最果ての月に吠える
バルコニーには生暖かい風が吹いていた。





コンクリートの床に崩れ落ちた私の手の中で、ケータイが光を失い、切れていた。





「リューネ。戻ってきたかい?」





優しい声がする。





だけどそれはきっと、私を通り抜けて、あのヒトに向かって響く。





「先輩、ずっと待ってたの?」





「今日は1時間13分だった。リューネは時々違う世界へ行ってしまうからその時は待つようにトモエが言っていた」





彼女は受け入れてくれなかったのに、まだそんな約束を憶えている。





彼女を裏切らないように、守っている。





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