最果ての月に吠える
一瞬我を忘れた私の隣に彼は並んだ。





「キレイだね。マキ」





彼は私をマキと呼ぶ。





いつもなら部屋に入るなりせっかくの衣装の制服を乱暴に剥ぎ取り、マキと呟きながら一人で絶頂に達してしまうのに。





「どうしたの? フミオ」





私はマキじゃない。





それなのに彼はアキタフミオと本名を名乗った。





彼は六本木ヒルズに住むベンチャー企業の若き社長だった。





「君とこうして雪が降るのを眺められてよかった」





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