最果ての月に吠える
動物園の朝は早い。





午前8時から仕事が尽きることはない。





僕の担当はフンボルトペンギンだ。





フンボルトペンギンは日本で飼育されているペンギンの大半を占めていて、南米のチリやペルーの沿岸に生息している所為(セイ)か、冬は少し寒そうに見える。





そんな空を飛べない彼らに声をかけながら、小アジを一匹ずつ口に差し入れる。





七、八匹咀嚼(ソシャク)すると満足したようでプールの大空へと舞い落ちる。





全ての餌を与え終えて振り返ると、一羽のペンギンが重く広がる鈍色(ニビイロ)の冬空を見上げていた。





その姿に、サバンナを見つめる少女が重なって見えた。





でもこんなに小さくはないか。





そう思って僕は彼の頭を撫でた。





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