最果ての月に吠える
「もしもし、リューネ? やっと着いた?」





聞き慣れた声が、私を呼んだ。





「今ようやくエスカレーター。カズネは?」





「本館にいるよ。こんな日に入試なんて今年の受験生は可哀想だね」





私もカズネも一年前は受験生だった。





これほど早く過ぎた一年は今までなかった。





「入試って延期になったりするのかな?」





そう思えたのは入試で知り合ったカズネのおかげかもしれない。





遠巻きに私を囲む他の受験生の間から英語で話しかけてきた彼女は、私が日本語で返すと残念そうに微笑んだ。





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