最果ての月に吠える
時間を遅らせて開始された入試が終わった頃にはもう日が暮れていた。





肌を突き刺す冷気に揺られて落ちていく雪の花びらが、私達を覆うように開いたビニールの傘に囁きながら積もる。





急勾配の坂道をゆっくりと登ってくる黒いパジェロが、正門で凍えていた私達の前に止まった。





「遅いよ。ヒカル」





助手席に乗りながらカズネが叫んだ。





「雪ダルマになったらどうするの?」





「その時は動物園に入れてあげるよ。きっと人気者になる」





ルームランプに照らされる黒いセルフレームのメガネをかけた運転手が微笑む。





このヒトが、カズネのカレシ。





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