最果ての月に吠える
彼はこの大学の住人だ。





二年留年している彼は今年も進級をしないと言った。





「そうだといいな。―――ねぇ、大江先輩?」





フェンス越しに天頂へ昇り詰めた太陽を微睡んだ瞳で見ていた。





「三年ダブ男になるのはなぜ?」





彼は天才だ。





その気になれば東京郊外のこの大学ではなく、東大だって行けたはずだ。





それなのに留年までしている。





「オレはここから出ていけない。ただそれだけだよ。リューネ」





彼について知っているのはそれだけだ。





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