最果ての月に吠える
リューネは柵の傍まで歩み寄っていたアミメキリンを立ち止まって見上げた。





彼は眠りを妨げる僕らに警戒を示していたのか。





僕はキリン舎に入り檻の南京錠を外し開放する。





しかし中には一頭もいなかった。




外に戻るとリューネがまだアミメキリンの親子を見つめていた。





「リューネ。急がないと―――」





真上に昇った白い満月が、彼女の瞳に侵入していた。





その大きく見開いた瞳に漂う月が親子のキリンを飲み込んでしまいそうだった。





そして僕らでは届かない高みから遥か彼方の眺望を潤んだ瞳に映すアミメキリンは、もう帰ることはないあのサバンナを思い出しているのだろうか。





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