最果ての月に吠える
「加藤君。明日なんだけど」





日誌を書いているとコーヒーを僕の手元に置きながら主任の水野さんが話しかけてきた。





「ライオン頼めるかな?」





彼はベテランの飼育員だ。





北海道で働いていたところを園長に引き抜かれてここに来た。





「え? 奥寺さんは休みなんですか?」





そして僕に動物園での仕事を教えてくれたのは彼で、刺激のない平坦な人生を歩んでいる。





「彼女は子供さんがインフルエンザでしばらく来れないんだ。注意事項は日誌に書いてあるから」





尊敬はするがどこか受け入れられなかった。





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