最果ての月に吠える
「―――わかったんだよ。動物達は動物園にいることで野生に暮らす以外の意味を持っているって。彼らはここで生きているんだ。





出入口で会った人を憶えてる? あの人はこの動物園で初の女性飼育員なんだ。誰よりもここの動物達を愛している。そしてあのライオンの母親代わりだった。





君が出ていった後、ライオンは彼女の言うことに従って自分から檻に帰っていったよ。檻の中が自分の居場所なんだと知っていたんだ。それを見てわかった。





僕らのしたことは間違いではなかったけど彼らに必要ではなかったんだ。与えられた自由にあって初めて彼らは生きていると人間に認識される。





僕らだって同じだよ。目の前に自分とは違う誰かがいることを理解すれば自分がそこにいることを理解できる。





リューネが自由を見せたいと言ったヒトにも君が君に与えられた自由を見せてあげれば、そこには自由があるんだと教えてあげられるはずだよ」





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