最果ての月に吠える
意識は浅瀬に舞い戻り頭を撫でる感触がオレを現実の世界へと呼び起こす。





「大江君。よく眠れた?」





「夢を見た。トモエが笑っている夢」





そう、とだけ言った。





「どうした? こんな時間に」





朝早くトモエがいることは稀だった。





大学内の23号館地下2階にある精神分析センターは宿直の看護スタッフがいるので精神科医のトモエは通常の出勤であればここにはいないはずだった。





「動物園が火事になったのよ。もしかしたらアナタが眠れないんじゃないかと思ったから来たんだけど、余計な心配だったみたい」





そんなことはないさ。





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