最果ての月に吠える
「君は、ライオンが好き?」





繰り返し流れる甘ったるいメロディが誘う夕闇の中で、彼女の両耳は貝殻に覆われた閉塞空間にあるようだった。





「もう閉園だよ?」





近付いて彼女の横顔を観察する。





黒く胸まで伸びた髪に包まれたはっきりとした顔立ちは、僅(ワズ)かに僕の心へ違和感を生み出していた。





「泣いてる」





その囁きは雑音の底に埋もれてしまいそうで、僕は拾い上げるためにもう一歩近寄った。





「ライオンだから鳴かないわけがないよ」





ゆっくりと僕を視界に存在させる。





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