最果ての月に吠える
朝食と午前の回診が終わってから私はナースセンターに散歩へ出掛けると告げ彼を連れ出した。





病院からの脱出は何の問題もなかった。





あったとすれば私の紺色のワーゲンに彼を乗せるのに時間が掛かったくらいだった。





外の空気はむせ返るように暑くて両足にギプスをした大江先輩は辛くないかと心配していたが、リクライニングさせたシートに寝そべったまま流れる景色を見ていた。





久しぶりに見る大学以外の街並を楽しんでいるのか、初めての事態を前に緊張しているのかわからなかったけれど、ずっと無言だった。





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