ねえ…微香性恋愛、しよ?
序章~悪夢、甦る。
じゃーこう【麝香】‥カウ

香料の一種。ジャコウジカの麝香嚢(のう)から製した黒褐色の粉末で、芳香が甚だ強く、薫物(たきもの)に用い、薬用としても使う-

(引用-広辞苑第六版 岩波書店)



…私、大宮真白(ましろ)には、常に鼻をクンクンさせる癖がある。自身ではあまり意識する事はないけれど、どうも自分のお気に入りを手に入れる際には、その物の匂いをかぐことで良し悪しを決定する事が多いらしい。
理屈ではなく、直感的に解決できるので心地が良いからかも知れない。
そして、この彼氏を手に入れた理由も…


「おい、真白!また鼻をクンクンさせているぞ。みっともないから止めろ。
周りから見たら、変な人みたいだぞ?」

「あっ、ゴメンね、翔。でもこのクリスマスイブのイベント会場は、良い匂いで一杯だから…」

「変わった奴!さあ、次いくぞ。」

翔は私の手を取って、次の催し物のブースへと移動する。
私は少し顔を赤らめる。私を引っ張って歩く翔の背中に頼もしさを感じていた。
< 1 / 21 >

この作品をシェア

pagetop