ねえ…微香性恋愛、しよ?
「…もう、必要以上にかぐのは止めるんだ、真白。」

翔はそう言うと、いつもの優しい顔つきになった。
そして匂い袋を投げ捨て、私を抱き起こし、そのままぎゅっと抱きしめた。

「真白がクンクン出来ない様に、あの袋は、焼き捨てるなりなんなりする。
どうしてもクンクンしたいなら、俺の匂いだけかいどけ。
ただ、それでさえ適度にね。
そうしてくれないと、俺の中の親父の血が暴れだし、君を傷つけるかもしれないから。
…まだ君にかぎ当てられてない、俺さえも知らない俺の欲望、掘り返されなければ、安全でいられる。君も俺も。」

私はそっと、首を横に振った。ただ、これは今翔が言った事に対する否定ではなく、随分遅れた、翔の「俺と別れるか」に対しての答えだった。
…そう、答えは決まった。度を超した探求はいけない。あのおじさんだけじゃない。もしかしたら、誰もが匂いにただ鈍感なだけで、狂ってしまわずに済んでるだけかもしれない。
誰もが、あのおじさんみたいになってしまう恐れがある。
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