華と蜂蜜
「ふぅ…」
澪はため息をついた。
(カレシ、ねぇ…)
正直、興味が無いわけじゃない。
でも自分のイメージから考えて有り得ないし、それに…
「自分はトクベツ…」
思わず口から出てしまった。
今日も見た、あの夢の声。
あの声は誰だったのだろうか?
…思い出せない。思い出してはいけない気がする。
「へぇ…、自分でも分かってるんだ」
急に後ろから声がした。
驚いて振り返ると、同い年ぐらいの男性が立っている。
「あんた、誰?」
「おっと、そんな睨まないでくれよ~」
男はへらへら笑うと急に澪を真っ直ぐ見つめる。
それは少女マンガに出てくるような、ときめくものではなく、ただただ恐怖心を煽るようなものだ。
長い沈黙の中、耐え切れなくなったのか男が口を開いた。
「俺も君のその“トクベツ”に反応して来たんだからさ」
「!!あんた、まさか…!!」
澪は言いかけて止める。
間違っていたときの保険でもあるし、本当にそうならこれ以上言わなくても分かるはずだ。
男はニヤリと顔を歪めた。
その顔が合図のように澪は走り出した。