依存偏愛
「…? 何だよ、椎名。やっぱり片倉って彼氏でもいんの?」
そしてあたしがその意味を察するのと同時に、全く意味を取り違えた蒼井が椎名の話に食いついた。
でもそんな蒼井を気にすることなく、椎名の視線はあたしに向けられたまま。
あたしが何かを言わない限り、絶対にそらされないであろうその視線がウザい。
だから仕方なしに、「………金ないし。」とだけ返した。我ながら下手くそな嘘だけど、この際仕方ない。
微妙に雫と気まずいから会いに行きずらい、なんて本当の理由を、椎名に言える訳が無いのだ。こいつのことだから、ますます面白がるに決まってる。
「ほんなら貸しちゃる。」
でも、そんな嘘をまともに受け取ったらしい椎名は、蒼井の追求を軽くいなしながら真顔でそんな言葉を紡ぎ出した。
…――だから、金ないとか嘘なんだって。
星南学園方面に戻る金くらい、いつだって常備してる。それに。
「あたし、あんたにだけは借りをつくるつもりはない。」
ただでさえ干渉がウザいのに、これ以上関わりたくない。危険になる可能性が少しでもあるのなら、関わらないに越したことはないのだ。