依存偏愛

◆◆◆


「今日は、嬉しそうじゃったのう。」

「………。」

「久しぶりに、おまんの明るい顔を見た気がするぜよ。」


一体、何が楽しくてあたしについて来るんだろう、こいつは。

部活終了後の、あたりが茜色に染まった家までの道。いい加減ムカついてきたあたしは、あたしの1歩後ろでひとりぺらぺらと話す椎名へと振り返った。


「……何じゃ?」

「何じゃ?じゃない。何でついて来るの。」

「そりゃあ、おまん。美人を夜道に1人で歩かせるわけにはいかんじゃろ。」


飄々とした態度に、余計イラつきは増す。
第一、まだ夜と呼べるような時間帯じゃないし。明るいし。それにまず、あたしは美人じゃない。


「……なら、もう結構。家すぐそこだし、さようなら。」

「さようなら。って……。相変わらず冷たいヤツじゃの。いくら俺でも傷つくぜよ。」


なら、勝手に傷つけばいい。
そもそも、傷つくとか微塵も思ってないクセによく言う。

しかも、その発言を無視して背を向けたあたしの後ろ、性懲りもなく再び椎名の足音が続いた。閑静な夕暮れの住宅街に、2人分の足音が響く。
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