依存偏愛
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「今日は、嬉しそうじゃったのう。」
「………。」
「久しぶりに、おまんの明るい顔を見た気がするぜよ。」
一体、何が楽しくてあたしについて来るんだろう、こいつは。
部活終了後の、あたりが茜色に染まった家までの道。いい加減ムカついてきたあたしは、あたしの1歩後ろでひとりぺらぺらと話す椎名へと振り返った。
「……何じゃ?」
「何じゃ?じゃない。何でついて来るの。」
「そりゃあ、おまん。美人を夜道に1人で歩かせるわけにはいかんじゃろ。」
飄々とした態度に、余計イラつきは増す。
第一、まだ夜と呼べるような時間帯じゃないし。明るいし。それにまず、あたしは美人じゃない。
「……なら、もう結構。家すぐそこだし、さようなら。」
「さようなら。って……。相変わらず冷たいヤツじゃの。いくら俺でも傷つくぜよ。」
なら、勝手に傷つけばいい。
そもそも、傷つくとか微塵も思ってないクセによく言う。
しかも、その発言を無視して背を向けたあたしの後ろ、性懲りもなく再び椎名の足音が続いた。閑静な夕暮れの住宅街に、2人分の足音が響く。