依存偏愛
「……なぁ。」
「………。」
「なぁって。」
「………。」
「片倉。」
「………何、しつこい。」
もう、本当に何なんだろう。
足を止めて振り向けば、意外にも真面目な顔をしていた椎名と視線が絡んだ。
何だと訝しむ暇なく、不意に伸びてきた手があたしの右腕を掴む。そして制服の上から、傷痕があるであろう箇所に触れた。
「……っ!気安く触んなっ!!」
「双子の片割れと同じこの傷は、おまんらが隠していることに、何か関係あるんか?」
振りほどこうと思ってもなかなか振りほどけない力の強さに、持っていた第二かばんを椎名に投げつける。
けれど怯むことなく紡がれた問いに、ぴたりとあたしの動きは止まった。
「……椎名に関係ない。」
「関係なくないき。」
「……放して。」
「イヤぜよ。」
永遠に続きそうな押し問答に、強く椎名を睨みつけるしかできなくて。ぎゅっと唇を噛み締めれば、椎名は何を思ったのか、おもむろにあたしの袖を捲りあげる。
刹那、白い腕に浮かぶ傷痕が顕わになった。