依存偏愛

「でもそーいうのって、ウザいよね。」

「いやいや。そうでもしなきゃ、こんなのが大谷くんと付き合える訳ないっしょ。…ね?茜。」


まぁ、呼び出しに素直に応じた私自身もどうかしてる。……でも、半強制的に体育準備室へと引っ張られて来たっていうのも、否めないのか。

部活後、僅かに訪れる体育館の静寂の中。部活の生徒が散り散りになった後の、人っ子ひとり居ない体育準備室。

例の如く私の目の前に立ち塞がる、名前さえもあやふやな3人が気味悪く口角を上げる。そのうちの真ん中が、楽しそうに振り返った先、古い跳び箱に腰掛ける畑島さんが楽しそうに笑っていた。


「ホントだよー。どんな手使ったのか気になるなー、あたし。」


ぽん、とリズミカルに跳び箱から飛び降り、3人の隙間を通り抜けて私の方へと歩み寄って来る彼女。

じんわりと溢れ出て来る恐怖に耐え、後退りをしないように踏ん張れば、とっても近い距離で顔を覗き込まれる。


「相変わらずムカつくよね。」


そう呟かれたのと同時に、貼付けられていた畑島さんの笑顔が、一瞬にして、消えた。
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