依存偏愛
そんな経緯を思い出し、ふぅ、と大きく息を吐いた。まだ満開とは言えない桜並木の下を歩き、今まで数回しか訪れたことのない高等部の校舎へと足を踏み入れる。
そして向かったのは玄関先の掲示板。そこにはクラス分けが掲示されていて、予想通り、たくさんの人が掲示の前に群がっていた。
もちろん、そんな人の壁を前にして、私に掲示が見える訳もない。少し人が散るのを待とうかと人だかりを離れたとき、そこから抜け出してきた見慣れた顔を見つけた。
「…あ、大城くん。」
「おぅ、笹川。……何や、片倉と一緒ちゃうん?」
思わず声をかけた私に、大城くんは笑顔で近づいて来る。けれど問われた内容に、私はあからさまに顔をしかめてしまった。
「笹川?」
「あ、えっとね、旭ちゃんは外部入学で藤宮大附属行ったんだよ。だから、もう一緒じゃないの。」
片倉、は旭ちゃんの苗字。両親が離婚した際に、私と旭ちゃんの苗字は変わっている。
でもまさか、いきなり旭ちゃんの不在を聞かれるとは思ってなかったな。いつも一緒だったから、そう聞かれるのも仕方ないのかもしれないけれど。