依存偏愛

でもこれ以上、学校に残るわけにはいかなかった。遅くなって、余計暗くなった道を歩くのはごめんだし、もうすぐ生徒玄関も閉められてしまう。

……仕方ない、か。
大きくため息を吐いてから、ずぶ濡れ覚悟で降り注ぐ雨の中へと足を踏み出した。


「……あれ? 笹川先輩、どうしたんですか?」


刹那、不意にかけられた声に、身を濡らす直前で後方へと振り返る。するとそこにいたのは、キョトンとした表情の大谷くんで。


「……何で、居るの?」


同じ敷地内にあるとはいえ、中等部の彼がこの時間帯に高等部の校舎に居るなんておかしい。

ましてや今日は、選抜メンバーの練習の日でも無かったのに。

思いのほか疑心をはらんだ私の問いに、大谷くんはすぐに問いの内容を察したらしく、柔らかく表情を崩した。
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