依存偏愛
「何か来月に急遽、藤宮大附属とまた合同練習があるみたいで。その話を詳しく聞きに、佐久間先生に会いに来たんです。」
言わずもがな、佐久間先生は高等部のバスケ部顧問だ。それにしても、本当にいきなり。しかもこんなタイミングで、合同練習だなんて。
そもそも、今日の時点ではまだ高等部バスケ部でそんな話題になってはいなかった。まぁ、明日にでも正式に発表されるんだろうけど。
でも、何か変だ。何が?って言われれば、間違いなく私自身が。
また来月、旭ちゃんに会える。そのはずなのに、ちっとも嬉しくない私がここに居る。
私が旭ちゃんと会うことを望んでいないなんて、絶対にありえないことだったのに。
それもこれもやっぱりきっと、拭いきれない後ろめたさがあるからだろう。私がやっていることも、いじめられていることも、旭ちゃんは知らない。
今まで一度だって、旭ちゃんにだけは嘘も隠し事も、したことはなかったのに。
「笹川先輩……?」
「え?」
不意に鼓膜を揺らした声にはっとして思考を引き戻せば、長身の彼が私の目線に合わせるように屈み、私の顔を覗き込んでいた。