依存偏愛

「え?じゃないですよ。笹川先輩は、今、部活の帰りですか?」

「うん、そうだよ。片付けに手間取っちゃって散々なのに、雨降りで傘ないから、走って帰ろうとしてたところ。」


考えていたことを表情に出さないように、脳天気な笑顔を貼付ける。すると大谷くんは、何かを考えるそぶりを見せた後、ゆっくりと口を開いた。


「……じゃあ、一緒に帰りますか?オレ、一本なら傘持ってますし。濡れて帰るよりは、マシだと思うんですけど。」

「一緒に?」

「ああ、イヤならいいんです。」


いわゆる、相合い傘ですか。
抵抗がない訳ではない、けど。
確かに濡れて帰るよりはいいかもしれない。今の季節、濡れて冷えたらめんどくさくなりそうだし。
名目上は、恋人なのだから。


「イヤじゃないよ。ぜひ、傘に入れてください。濡れるの、イヤだったんだ。」

「もちろん、どうぞ。」


ぺこりと小さく頭を下げた私に、大谷くんはくしゃりと笑った。
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