依存偏愛
校門を出てすぐに、大谷くんの申し出を断らなくて良かったとしみじみ感じた。
だんだん酷くなる雨足に、冷え込む外気。
ずぶ濡れになんかなってたら、間違いなく風邪をひいていただろうな。
道中、私達の間には特に会話はなかった。
私から大谷くんに話すことなんてないし、おそらく彼だってそう。所詮、私のわがままで繋いだ関係なんだから、当たり前といえばそれまでで。
「……っ、笹川先輩、もう少し壁際に寄ってください。」
「え?」
突如、前触れもなくそれだけ言われ、何事かと思う間もなく壁際に押しやられた。刹那、勢い良く走る軽自動車が、私達の横を通り過ぎる。泥混じりの汚い水を、豪快に跳ねさせながら。
「悪天候の日くらい、歩行者のことを考えてほしいですよね。」
呆れながらにそう言った彼の制服も、私を庇って、無残に汚れた。