依存偏愛

「……ごめん。私、ぼけっとしてて。制服、汚れちゃったね。」

「いいんです、このくらい。軽く洗えば、明日には乾くはずですし。」


そう笑いながら、私の方へと身体を向けた大谷くん。そこでふと、気がついた。私の右側を歩く彼の右肩が、異常に雨に濡れていることに。

恐る恐る見下ろした私自身の左肩は、これっぽっちも濡れてはいないのに。

ただでさえ身長差があって、相合い傘をするには無理があったのだ。なのに、私が濡れないように、そんな配慮をしてくれていたの?

……思い返せば、それだけじゃない。
大谷くんは必ず、自らが車道側になるように歩いてた。

何で、こんなに優しいのだろう。
私は大谷くんの気持ちを、踏みにじっているのに。本当はこの優しさに、触れる資格なんて無いのに。

かつり、かつり。
雨音の中に、2人分の足音がこだまする。
俯いたまま歩き続ける私の横、もう少しで私の家に着くという場所で、大谷くんはおもむろに足を止めた。
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