依存偏愛
溢れ出る涙のせいで、視界は劣悪。
ぼやける視界で階段を駆け降り、玄関までひた走る。ご丁寧にも靴を履き替えて外に飛び出せば、眩しい太陽の光が身体に纏わり付いた。
それでも、走る。
無駄に広い敷地に内心悪態をつきながら、沸き上がる雑念を打ち払うように。
でももう少しで校門を抜け出る、というタイミングで、私の足は止まった……否、止まらざるを得なくなった。
「…っ、待って、ください。」
途切れ途切れでそんな言葉を吐き出しながら、しっかりと私の手首を掴む誰かの手。
さすがに男子の力を振り払うこともできず、抵抗することなく掴まれた手の力を抜く。
それに、鼓膜を揺らした声色で、後ろに居るのが誰かなんて容易に予想ができた。というより、1週間前までは頻繁に会っていたのだ。間違うはずが無い。
確かめるように振り向いた先、ぼやける視界の中には、予想に違わずやっぱり大谷くんの姿があった。
走って来たのだろうか、私同様若干呼吸が乱れている。でも何より、何で授業中のこの時間、大谷くんが私の目の前にいるのかが不思議でならなかった。