依存偏愛
「……ついて、こないで。」
けれど、何だっていうんだろう。
後で先生に怒られるのを覚悟で学校を飛び出したのはいいけれど、何で椎名までついてくるのか。
「俺は勝手に走っちょるだけじゃ。」
「椎名と一緒に居たくない。」
「仕方ないぜよ。行き先が同じじゃき。」
椎名に、星南学園へ行く用事なんてあるわけ無いのに。そもそもあたしは、椎名に行き先なんて言ってない。
ウザいけど構うのも面倒で、結局あたしは無視するという選択肢を選んだ。
授業中であるはずの時間帯、高校生の男女2人が制服で街を走ってる姿は、周囲から見れば相当おかしな光景だろうけど。
そんなこと、気にすることなく駅に到着。
何故か2人で電車に乗り込めば、さすが平日の日中といったところか、客の数は極めて少なかった。
「……座らんのか?」
「………」
そんな中、立ったまま交わされる……否、一方的に紡がれる椎名の言葉を全部無視した。
今はこんなのに、構っている余裕はない。
考えられるのは、雫のことだけ。
…――雫に何も、無ければいいんだけど。
さっきから嫌な予感は止まらない。
沸き上がる不安を押し殺しながら、もっと早く行動に移せなかった自分の弱さを呪った。