依存偏愛
…――っていうか、え?
「サク……?」
刹那、ふと気づいてしまった確信的な疑念。
あたし達から遥か前方を歩く2人のうち、男の方。後ろ姿に見覚えがあると思ったけど、あの長身、シルエット……、間違いなくサクだ。中等部の制服を着ていることが、その確信をより深くさせた。
「サクって……。あぁ、あれは大谷なんか。真面目そうに見えて、あいつもなかなかやるのう。」
じゃあ、女は……?
今まで、サクに彼女がいるだなんて話、聞いたことはない。
椎名の独り言を気にもとめず、相当離れてしまった彼女の姿を、必死に目を凝らして見る。そしてその人物を認識してしまった刹那、頭を鈍器で殴られたような凄まじい衝撃が走った。
「……のう、片倉。もしかして、あの女、」
「雫……?」
どうやら椎名も、あたしとほぼ同時に女が誰だか察したらしい。あたしと遠ざかる雫の後ろ姿を見比べ、窺うような表情をあたしに向ける。
「……嘘、だ。」
思わず零れた言葉は、まるで説得力がなかった。何で、どうして。そんな気持ちだけが脳内を無限に掻き回す。
…――だって、ありえない。
雫が、サクと一緒に居るなんて。
しかも、手を繋いで学校を抜け出すなんて。