依存偏愛
「雫、何で……?」
離れていく背中を、追い掛けることはできなかった。大声を出して、呼び止めることさえできなかった。
「何で、」
2人でなら生きていけると、2人なら信じられると、お互いだけを信じると、そう言っていたはず。
それなのに今、雫の隣に居るのはあたしではない。
いつから、こんなことになっていたんだろう。あたしが恐れずにもっと早く何かをしてれば、何かが変わったのだろうか。変えることが、できたのだろうか。
訳がわからなくて、悔しくて、哀しくて。どうしようもない喪失感が胸を満たす。しだいに込み上げてくるものを、堪えることなどできなかった。
ぽたり、音もなく地面に吸い込まれ、無機質なコンクリートを濡らす涙。次から次から溢れてきて、潤む視界がウザい。
でもそんな中、不意に視界が遮られた。背中や肩から伝わって来る温もりに、椎名に抱きしめられたのだと気づくまでおよそ3秒。
「……放してよ、馬鹿。」
「馬鹿はおまんぜよ。裏切られたんは、結局おまんじゃき。」
…――裏切ら、れた……?
そうか。裏切られたのか、あたしは。