依存偏愛
「それに、それとこれとはまた話が違うじゃないですか。やっぱりオレ、どんなに嫌われてたとしても、相手が誰だとしても、泣いてる人を放っておけるほど薄情ではないみたいです。」
……わかってる。
わかってるよ、そんなこと。
だってきみは、誰よりも優しい。こんな酷い私をも、見捨てたりはしなかった。
ゆっくり、微かに顔を上げれば、潤んだ視界の先にぼやけた大谷くんの顔が映る。
意外にも、眉をハの字に下げて苦笑していた彼に向け、私は深く頭を下げた。
「…? いや、どうしたんですか。っていうか、頭なんて下げないで、」
「ごめんね。本当に。私のわがままに振り回して、傷つけて。」
「…、笹川先輩……」
「本当に、ごめんなさい。」
大谷くんの言葉を遮るよう紡いだ謝罪の一言を境に、数秒、私達の周囲に沈黙が漂う。
そんな中、頭を下げたままのあたしの耳に、大谷くんの呆れたようなため息が聞こえてきた。そして、
「……いいんですよ、もう。」
相変わらず優しい大谷くんの声が、私の鼓膜を揺らす。