依存偏愛
体育館に着くと、もうすでにバスケ部が数人ちらほらしていて。合宿とかでも面識があるため、先輩方に会釈を繰り返しながら更衣室へと入る。
でも女バスの部員達はまだ来ていないのか、更衣室にいたのは1人の女生徒だけ。偶然見えた制服裏の校章は、私と同じ赤色。
でも特に興味なんて無くて、彼女の横で着替え始める。すると予想外にも、彼女の方から私に声をかけてきた。
「……笹川雫、さん?」
「……え?」
でも、彼女から紡がれた私の名前に、ドキリと胸が鳴った。それは別に、いきなり名前を呼ばれたから、という理由ではない。
私には昔、旭ちゃんと決めたことがある。
名前で呼び合うのは信頼の証であり、親しさの表れ。だから簡単に、他人に名前を呼ばせないようにしようって。
だからこそ、私のことを“雫”と呼ぶのは…否、呼んでいいのは旭ちゃんだけ。もちろん、逆だって同じ。旭ちゃんを名前で呼んでいいのは私だけ。それはきっと、これから先も変わらない。
だって私には、旭ちゃんさえいればいいから。旭ちゃんだけを、信じているから。