依存偏愛
そのまま、お互い何も発さずに、何分くらいが経ったのだろう。
入店の際、目の前に置かれたコップ内の氷はすでに解け、側面に付着している水滴は音も無く机上に垂れる。
ただ、賑わうファミレス内の喧騒が、絶え間無く鼓膜を刺激し続けた。
「…――あの、笹川先輩。」
そんな中、先に口を開いたのは大谷くんだった。落としていた視線を彼に向ければ、彼の視線も私に向けられる。
「今ずっと、考えてみたんですけど。」
「……何?」
「それはつまり、旭先輩も笹川先輩と同じように思ってる、ってことですよね?」
「……うん。」
旭ちゃんも、私と同じ。
それは間違いないはずなのに、大谷くんの問いに対して私は、自信を持って即答することができなかった。
旭ちゃんが今、何を思っているのか。
それがよくわからないのはもちろん、私自身が、その誓いを侮辱するようなことをしていたのだから。