依存偏愛
「何か今の笹川先輩、放っておけないんです。さっき会ったときも泣いてたし、今も、泣きそうな顔してるじゃないですか。」
泣きそうな、顔……?
自覚して無かった分、はっとして思わず顔をそむける。何より、それを指摘されたことが情けなかった。
ぎゅっと、机の下で両手を握りしめた。そしてふがいなさを隠すように、目を伏せて唇を噛み締めた。
そんな私の様子を、少し気にするそぶりを見せながら、大谷くんは優しい声色で続ける。
「高等部での出来事も、旭先輩との誓いとかも、オレにはわからないことばっかりですけど。それについて聞いたところで、素直に話してくれないでしょう?でも、それならそれで、オレにできることは何かなって。」
「……できることなんて、何もないよ。」
「ははっ。そう、言わないで下さいよ。」
思わず挟んでしまった言葉に、大谷くんは乾いた苦笑を零した。
けれど本当に、他人にできることなんてない。大谷くんが理解している通り、誓いの背景はもちろん、私は誰にもいじめのことを話すつもりはないのだ。
第一、旭ちゃんにも言っていないことを、信用する価も無い他人に詳しく話す訳がないでしょう。