依存偏愛
「大丈夫じゃき。おまんが心配しとるようなことは、一切しとらん。」
「…意識が混濁してる女を連れ込むなんて、最低。」
「……だから、何もしとらんぜよ。」
誰が、そんな言葉を信じられるか。
そもそもあたしにしてみたら、椎名自体が信用ならない。
「帰る。」
だからさっさと、帰ろう。
1人でゆっくり、考えよう。
色々と整理したい事柄が、たくさんある。
掛けられていたブランケットをめくり、椎名を押しのけるようにベッドから立ち上がる。
けれど歩き出そうとした刹那、椎名によって強く引かれた腕。思いのほか強かった力に抗えず、あたしは再びベッドへと腰を下ろさざるをえなかった。
「……何。」
「今、何時だと思ってるんじゃ。
もう夜中ぜよ。夜道は危ないき。今日はこのまま、泊まっていけばいいがじゃ。」
何を、言っているんだこの男は。
怪訝さを隠し切れずに椎名を見上げれば、椎名はあたしの視線に合わせるように屈み、妙に柔らかく笑う。
…――あああ、もう。
その笑顔が、余計信用できない。