依存偏愛

エンジン音が鳴り止んだバスから、星南メンバーがぞろぞろと降りてくる。

その中に、当然ながらサクの姿を見つけて、どくん、と大きく胸が鳴った。つい先日、サクと雫、ふたり手を繋いで歩いていた後ろ姿が、鮮明に脳裏に蘇る。

5人のメンバーが降りた後、少し遅れて降りてきた雫を見て、今度はチクリ、と胸が痛んだ。


「遅れて悪かったな、結城。」

「いや、気にすることないさ。」


神部と結城が言葉を交わしている間も、サクや雫と視線を合わせることもできず、ふたりを避けるように顔を背ける。

ちらちらとあたしの様子を窺うような雫の視線が今はウザくてしかたない。

隠れるように上森の陰に移動すれば、怪訝そうな彼の瞳があたしを射抜いたけれど、それは気づかなかったフリをした。
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