依存偏愛
「……おい。片倉、」
「何。……ほら、早く体育館行くよ。」
「? ああ。」
上森越しに見えた雫が、今にも泣きそうな顔をしているのが見える。
そして刹那、あたしに向けて小さく踏み出された雫の足に気づき、今度は逃げるかの如く上森のジャージを引っ張ってその場を離れた。
訳がわからないとでもいうような表情を浮かべた上森に有無を言わせないように俯き、奥歯をぎりっと噛み締める。
雫と会うのがこんなに苦痛になるなんて、思ってもいなかった。
◆◆◆
全員が体育館に移動し、着替えが済んだ後、すぐに練習は始まった。
ドリンクを作ったり、タオルを用意したり、ストレッチの数を数えたり、とりあえず何かをすることで気を紛らわせる。
仕事さえしていれば最低限余計なことは考えなくて済むし、変に話し掛けられたりもしない。
体育館外の水呑場、響き渡るブザーの音を聞きながら、小さく息を吐いた。